線形代数をわかりやすく(7) 線形写像
はじめに
本記事は線形空間論の勉強をしたまとめです。 私の理解が誤っている可能性がありますので、その際は優しく指摘していただけると嬉しいです。
写像
「写像」というのは要するに「関数」のことである。 つまり、何かが与えられたらそれを何かしらのルールに従って変換するもののことを「写像」という。
集合の任意の元
に対して、集合
の元を一つ対応させる規則
を写像と呼び、次のように表す。
また、が
に対応するとき、次式のように表す。
「写像」と「関数」の違いは何かと聞かれたら私は答えに窮する。 というのも、両者にあまり違いはないからだ。
ただ、私個人の感覚では「関数」と言われた場合は「数値から数値への変換」を思い浮かべる。
たとえば実数値関数(実数を実数に変換)、複素関数(複素数を複素数に変換)など。
一方で「写像」と言われた場合には、もっと一般的な変換を思い浮かべる。
まあ、「数値から数値への変換」ではない変換に対して「関数」と呼んだところで間違いだとは思わないし、だれも怒らないと思うので「写像」でも「関数」でも好きなほうで呼んでいいと思う。
さて、ここで一見写像っぽいけど写像とは呼ばない例を挙げよう。
- 元
に対して行先が複数あり得るもの
- 対応する[y \in Y]が存在しないような
があるもの
- (例) 整数から整数への写像で、逆数を対応させる規則
(整数の逆数が整数になるとは限らない。
)
- (例) 整数から整数への写像で、逆数を対応させる規則
逆に、次のようなものは写像と呼んでいい。
- 複数の元
が同じ
に対応しうる(
)ような規則
- (例) 正の実数から正の実数への写像で、ルートをとるような規則
- (例) 正の実数から正の実数への写像で、ルートをとるような規則
- 来る元
が存在しないような
があるもの
つまり写像であるためには集合のすべての元に対して必ず一つ対応先が定まっていることが必要なわけだ。
もしすべての元の行先がバラバラなとき(同じ
に写されるような
が複数存在しないとき)、その写像は単射である、という。
一方、すべてのを写すことで
を網羅できるとき(任意の
について
となる
が存在するとき)、その写像は全射である、という。
線形写像
写像というのは非常に汎用的な概念である。
汎用的なものというのは使える対象が多く便利な一方で、対象を絞って議論したほうがその対象に特有の性質を発見することもできる。
これからの話はまさにその一例で、写像のなかでも線形空間から線形空間への写像、さらにそのなかでも特に扱いやすい性質を持つ写像に対象を絞る。
その写像こそ「線形写像」である。
- 任意の
について
- 任意の
と
について
要するに、「2つのベクトルを足してから写像で写しても、各ベクトルを写した後に足しても、結果が同じ」「ベクトルをスカラ倍してから写像で写しても、写してからスカラ倍しても、結果が同じ」という2つを満たした写像のことである。
お気持ちとしては、一様にムラなくまっすぐに変形させるようなイメージ。
線形写像には以下のような例がある。
線形写像の像と核
線形写像について、
の部分集合
をの像という。
また、の部分集合
をの核という。